
「JB23は確かにあまり人気がなく、数が少ないので今では目立つ存在です。信号などで止まると横の視線を感じるし、若い人からは『この車、何ですか』と聞かれることもあります」
ジムニーの魅力を聞くと、
「万能車ですよ。もし何かあったとしても、どこでも走ることができるし、キビキビして思い通りに運転することができます。腕はついてないけどガンダムを操縦している気分です」と大きく笑った。
JB23はカスタマイズするためのサードパーティーの部品が多くあり、増田さんのジムニーも車高を上げるリフトアップがなされ悪路もものともしないことがうかがえる。
「最新作の小説『警察官の心臓』(講談社)にはジムニーを愛車にする警察官が重要な役柄として出てきます。個性的な車は小説や映画の重要なアイテムとなります。それによって登場人物の性格を浮き彫りにすることができるのです」
クセのある車がいい
日本の自動車についても聞いた。
「今の日本車はきれいにつくっていてスタイルもいい。走りもいいし、燃費もいい。でも個人的には完璧なものより少しクセのあるほうが好きですね」
また、増田さんは新車に乗った時期もあるが、中古車がより好きだとも。
「長く乗り続けられているのは、いい車の証しです。何人ものオーナーが乗り継いだ中古車はもっと好きです。その車がいろいろな経験を蓄積し、自分のために長い時間をかけて仕立ててくれたようなものですよ」
どうせ乗るなら自分が乗りたい車に乗りたいし、結果、中古車を選ぶと力説した。
「ジムニーは四角いデザインが中心なので、丸いJB23はレアで他とは違いクセがあり個性があるのです。今日もガンダムのようなジムニーに乗って宇宙空間に戦いに出かけていきます」

(ライター・鮎川哲也)
※AERA 2025年4月7日号より抜粋