平和主義とは「お花畑」脳なのか?

左から大島新さん、小川淳也さん、和田靜香さん(撮影/朝日新聞出版写真映像部・佐藤創紀)

大島 とはいえ難しいのは、主権国家の政治家は国民のために働かねばならない。国益が優先ですよね。小川さんは、もちろん国益についても考えてらっしゃると思いますが、もうちょっと広い視野で「地球益」とか「国際公益」とか、そういうことを考える人だと思うんです。すると「主権国家の政治家として、なぜ国益を優先しないんだ?」って責められる。
 僕はね、政治家には小川さんのように「人間益」とか「動物益」とか「植物益」を考えてもらいたいんですよ。でもその考えはなかなか有権者に受け入れられない。 

小川 そういうことを言うと、「小川さん、頭の中お花畑ですよね」って言われるんです。そこで言い返したいのは「それこそが徹底したリアリズムなんですよ」っていうこと。廃れた国際社会の中で、繁栄する日本ってイメージできますか? 世界はめちゃくちゃだけど、自分の国だけが立派でいられるなんて、ありえると思う? 国益を考えれば考えるほど、安定した国際公益、国際社会が不可欠でしょう。お花畑でもなんでもない、目指すべきはそこなんです。容易に実現できるとはいいません。でも、それこそが実は、徹底したリアリズムですよ。
 だから、トランプがグリーンランドをよこせ、パナマ運河の利権をよこせ、自国ファーストだ!って言っていること自体、リアリズムに欠けているし、アメリカ国民の国益や誇り、自尊心を傷つけている。それこそ妄想的で現実を見ていないと逆に思いますね。

和田 ああいうトランプの言葉を聞いてアメリカの人たちは毎日、どんな風に暮らしてるんだろう? それこそ「これは夢か? 夢であってほしい」と思ってるんじゃないかなと思います。苦しくて息ができない。「人間益」とか「動物益」を考えるって大事ですね。そこでは息が出来る気がします。小さな動物の命も大事にするって、それこそ多様性ですよね。 

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利害を超えて理解し合うことは可能なのか。それを望むことは「お花畑」なのか。
とうてい分かり合えないとも思える相手と、どう向き合えばいいのか。国際間でも個人間でもあてはまる、普遍の問題について、鼎談はますます白熱してゆく。
(3回目につづく)

(文・黒川エダ)

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