左から大島新さん、小川淳也さん、和田靜香さん(撮影/朝日新聞出版写真映像部・佐藤創紀)
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 世田谷のブックカフェで開催された、立憲民主党・幹事長の小川淳也氏、ドキュメンタリー監督の大島新氏。聞き役のフリーライター、和田靜香氏の3名による政治鼎談。今回はその2回目をお届けする。

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 大島氏は小川淳也氏に密着したドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』(2020年公開)を監督。

 和田氏は2021年から22年にかけて小川氏に「政治を知りたい!」とガチンコ対談を申し入れ、時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。(以下『時給はいつも最低賃金~』)を上梓。同書は昨秋、大幅加筆され、文庫版(朝日文庫)として発売された。 

 映画と書籍で小川氏に迫ったふたりが、小川氏を交えて「今」の政治や情勢について語り合う。話題は政治や社会への危機感、そんな時代に政治が果たすべき役割について……と移っていく。

変わりゆくリーダー像=総理大臣とは

大島 私がいちばん好きな小川語録は「国境こそが最大の規制である」っていう言葉なんです。
地球温暖化をはじめ、世界規模の問題について考えると、国境などお構いなしの問題は多い。 

小川 戦争とか、格差とか、あらゆることを考えても、国境が最後にして最大の規制だと僕は思うんです。 

大島 その通りだと思いますが、現実世界では国境がさらに強固なものになっている。つまりみんな自国ファーストになっている。アメリカがいい例です。もはや国ごとの弱肉強食の世界になってきていて、小川さんのいう「対話によって理解しあう世界」から遠ざかっている。国内でも、威勢のいい、語気の強い人が、変に人気が出ていたり。
 そんななかで小川さんは、いったいどうしていくのかと。そういう話をしたいと思いますね。

和田 私は政治について学び始めた2020年ころと今とで、理想とするリーダー像が変わってきているんじゃないかと感じてるんです。5年前、大島さんが監督した映画『君はなぜ総理大臣になれないのか』を観た当時は、総理大臣ってもっとこう、私たちの暮らしに近い存在であってほしいと思っていたんですが。小川さんはどうですか? 総理大臣には……? 

小川 なりたくない。 

和田 断言ですか? 

小川 あれほどしんどくてツラくてキツくて、厳しい仕事はないと思う。本当に、本気で、本物の仕事をしようと思えばね。

和田 映画では最後に、大島さんが「世界に貢献していく日本の政治家として、小川さん、総理大臣になりますか?」と小川さんに聞いてましたよね。

小川 「その気概がないなら、今日にも議員辞職します」って答えたんですよね。

和田 その気持ちは、今も変わらないですか? 

小川 土俵の上で、徳俵でギリギリ片足ふんばってる状態かな。 

和田 大島さんはその後、NNNドキュメント『総理大臣を目指した人たち』をお撮りになりましたよね。すばらしいドキュメンタリーでした。大島さんの思う総理大臣像は『なぜ君は総理大臣になれないのか』を公開した当時と、あのドキュメンタリーを作っているときとで変わっていますか? 

大島 多少変わったかもしれませんね。これまではかなり高い理想というか、100点に近い総理大臣、リーダー像を意識してたんです。でも今は60点ぐらいでもいいから「変な人じゃないほうがいい」と思ってます。
「あの人」や「この人」がなるぐらいなら、低空飛行でいいから石破(茂)さんやっててくれ、みたいな(笑) 

和田 あははは! でも、ちょっと、納得します。

大島 トランプさんみたいな、ああいう極端な人がリーダーになるんだったら、60点でいいからむしろ石破さんで。フリをしているだけかもしれないけど、一応相手の話を聞くじゃないですか、あの人。リーダーはそういう態度をちゃんと示してくれる人でいてほしいと思う。
 

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