左から大島新さん、小川淳也さん、和田靜香さん(撮影/朝日新聞出版写真映像部・佐藤創紀)
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世界政治は目まぐるしく動き、国内でも参議院選挙が視野に入ってきた2025年春。平日の夜にもかかわらず、世田谷のブックカフェには熱気が満ちていた。50人ほどの来場者とオンライン視聴者が見守るなか、鼎談の席についたのは、立憲民主党・幹事長の小川淳也氏、ドキュメンタリー監督の大島新氏。聞き役のフリーライター、和田靜香氏の3名だ。

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大島氏は小川淳也氏に密着したドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』(2020年公開)を監督。

 和田氏は2021年から22年にかけて小川氏に「政治を知りたい!」とガチンコ対談を申し入れ、時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。(以下、『時給はいつも最低賃金~』)を上梓。同書は昨秋、大幅加筆され、文庫版(朝日文庫)として発売された。 

 映画と書籍で小川氏に迫ったふたりが小川氏を交えて、2020年以降、そして大きく変わりゆく現在の政治と社会を語り合う場となった。

小川vs.和田……対決から対話へ、乗り越えたことで見えてきたのは?

和田 私も大島さんも、小川さんに取材して映画や本を世に出したわけですが、あれから5年、3年と経っています。その間、世の中は、政治は、私たちはどう変わったのかを今日は話したいと思います。

大島 今、政治の世界はなかなかきついことになってますよね、特に去年から。
今日は明るい希望を持てる話ができるのか、かなり心配ですが、和田さん、小川さんとともに、その「よろしくない状況」の解決になりそうなことを、語り合えたらと思っています。

和田
私は1年にわたって小川さんにくらいついて(笑)政治のこと、社会のこと、多くを学ばせてもらって本(『時給はいつも最低賃金~』)を書きました。それを文庫化で加筆するにあたって、去年の6月に、また小川さんに時間をもらいまして……

小川 喧嘩になったよね(笑) 

和田 すごかった! こんにちはと言った瞬間、目の前で小川さんが激しく怒っている。 

小川 申し訳ない。 

和田 15分以上にらみ合ってというか。 

小川 ものすごい緊張感で。バッチバチだったね。 

和田 あのときは「今日はもう、このまま帰ったほうがいいのかな」って真剣に思いました。 

小川 僕も「今日は会わないほうがいいんじゃないか」って思ったもの。 

和田 それほど怒っていながらも、あきらめずに、対話できたことに意義がありました。 

大島 そんなバチバチの対立を乗り越えて収録された、文庫版にしかない「特別編」が『戦争を起こさないために』。はじめの対話のときにはロシアによるウクライナ侵攻はなかったし、ガザの悲惨な状況もなかった。だから、文庫本に収める追加の章として一番ふさわしいテーマだったと思います。すごく読みごたえがありました。

和田 ありがとうございます。小川さんと3年ぶりに話すにあたって、何をテーマにするのがいいのかいろいろと考えました。思い返せば2020年に書籍時給はいつも最低賃金~の取材で初めて小川さんの事務所に行ったときには、政治の「せ」の字も知らない。何にもわかってなかったですよね。 

小川 あの頃の和田さんとの対話は、無茶苦茶、手間がかかりましたよ(笑)。我ながら、本当に辛抱強いなって思いましたもん。

和田 今になると、びっくりするぐらい何もわかってなかったと自分で呆れます。それをなんとか本にまとめて。それから私もいろんなプロフェッショナルな方々にお会いして、引き続き学ばせてもらっています。今日もそうですが、何ら専門家でもない、地べたの生活者代表だからこその意見を言わせてもらってます。 

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