
小川 それもこれも、対話で対立を乗り越えたからこそ、なんですよね。
最近、TBSの「御上先生」という連続ドラマを録画して観てるんですが、ご覧になっている方いらっしゃいますか?
そこにね、「The personal is Political.」っていう言葉が出てくるんです。「プライベートで抱える悩みや問題は、すべて政治的である」っていう意味なんです。
和田 それって、フェミニズムのスローガン「個人的なことは政治的なこと」だと思います。
小川 そう。個人的なこと、私的なことも、すべては政治なんです。人は誰だって悩みや苦しさを抱えているはずで、その悩みや苦しみについて「これって、政治的なんだ」って思ってほしいんです。「辛いのは、自分が悪いんだ」「こんなことで悩んでるのは自分だけだ」なんて思わないでほしい。それはあなたの個人的な問題じゃなく、ちゃんと社会や政治とつながっている問題なんだと。

和田 まさに私の本のタイトル(『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』)じゃないですか!
小川 ドラマの中ですごく印象に残っていることがあるんです。「教科書検定」について学園祭で取り上げるべきか否か、クラスの中で討論するシーンがあったんですよ。取り上げる結論に至ったのですが、そこまでの過程が興味深かった。
賛成派は「こういう問題はきちんと考え、議論するべきだ」という。他方の反対派は「こんなことを取り上げたら、文科省からにらまれる」「授業時間だって無駄になる」っていうのが論旨だった。
意見が割れている生徒たちに向かって、教師役の松坂桃李さんが言うんです。
「では、反対派は賛成派の席に座りなさい。賛成派は反対派の席に座りなさい」。
それぞれ逆の意見の立場からディベートさせたんですよ。つまり、相手の立場や考え方、その理由を、お互いに想像し合って議論をする。これって、今の日本にも世界にも、欠落していることなんじゃないか。それがまさにドラマの中で展開されていたんです。
そしてドラマの中で生徒たちは、この議論を、格差社会など、社会のいろんな問題点にまで広げていく。
うちの党内も今、「給付か」「減税か」が課題になっている。じゃあ、同じように、お互いの立場を入れ替えてディベートしてみたらどうだろうかと。
大島 トランプとゼレンスキーにもやってもらったほうがいいですね(笑)
小川 プーチンもゼレンスキーも一回、ロシアから見たウクライナ、ウクライナから見たロシアを想像したほうがいい。逆の立場に立ってみる経験と訓練が、今の社会には欠落してるんですよ。
和田 文庫版で私が悩んでいた、私は正義なんだろうか?という問いかけを、自分にするのも大事かもしれません。