ビール離れが進む中、動き出したキリンビールの異端社員の挑戦を追った一冊。大量生産のビールづくりに背を向け、社内の反対にあいながらも個人の嗜好に合わせた「クラフトビール」の専門店を出店するまでの道のりを描く。
ドラマかと思うほど、登場人物は個性的だ。「淡麗」「氷結」などヒット商品を連発し、ビールでの世界平和への貢献を真剣に目指す奇才、「ビールの精霊」と話す凄腕の醸造技術者、会社員には見えない伝説の営業マン。本書が秀逸なのは彼らをスーパーマンのように扱わない点。異端とはいえあくまでも会社員であり、葛藤を抱えている。プロジェクトがゆっくりと前進する現実を丁寧に辿っており、読み手は共感を抱くはずだ。読みながら、飲みたくなる。彼らの挑戦は間違っていなかったのだろう。
※週刊朝日 2016年11月18日号