「熱男」ポーズをする松田宣浩(ソフトバンク時代)

選手の声が聞こえると性格がわかる

 球界OBが「無音試合」の開催を提案したことが話題になったこともあった。阪神の掛布雅之OB会長が1月21日に大阪市内であった甲子園歴史館の運営会議に出席した際、「佐藤(輝)が打ったホームランとか、子供たちも『こんな音がするの』って思うと思うんだよね。選手が音をファンに聞かせてあげる、そういうゲームがあってもいいんじゃないですか」と発言した。

 セ・パの両リーグでプレーしたOB選手も掛布氏の考えに同調する。

「選手の声が聞こえてくると、性格が見えるので面白いですよ。例えば、柳田悠岐(ソフトバンク)は打った瞬間に、『やべっ!』『うわあ!』と叫んで一塁に走っている。九里亜蓮(オリックス)が広島時代に対戦した時は、毎球のように投げるとき、『ウォー!』、『オラァ』と叫んでいました。抑えられてイライラした打撃コーチから、『打って黙らせろ!』と野手陣にゲキが飛んだことがありました。山川穂高(ソフトバンク)もファームでプレーしていた西武時代、内野の守備でミスした後に声を出してボールを呼び込んでいました。『イキのいい若手だな』と印象に残っていますね」

 ソフトバンクOBは、「無音試合だとファンのイメージが変わる選手が出てくる」と話す。

「筆頭候補が松田宣浩(元ソフトバンク、巨人)ですね。本塁打を打った後の『熱男』のパフォーマンスで有名ですが、三塁の守備中もずっと声を張り上げているんです。大量失点で負けている時にも、若手の投手に『いい球いってるよ!』『いいピッチャーだねー!』と1球投げるごとに叫んでる。応援歌が流れているとスタンドのファンは聞き取りづらいですが、あの声掛けがどれだけ投手に勇気を与えていたか。なかなかできることではありません」

 現役の選手はどう感じるか。在京球団の外野手は、「ファンの方たちの応援に背中を後押ししてもらっていることは間違いありません」と前置きした上で、こう続けた。

「年に数回は無音試合を導入してほしい思いがあります。村上宗隆ヤクルト)、岡本和真(巨人)は打った瞬間に凄い音がします。聞いてもらうと、迫力がさらに伝わることは間違いありません。あと、外野を守っていてフライを追いかける時にスタンドの声援でチームメートの声がかき消されてしまうことがあるので、その不安がなくなるのは精神的に楽になりますね」

 鳴り物応援が作る球場の雰囲気を楽しむ野球ファンが多いことも事実だ。ただ、メジャーのように球場の「音」を楽しむ機会があってもいいかもしれない。

(今川秀悟)

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