松岡かすみ『-196℃の願い 卵子凍結を選んだ女性たち』(朝日新聞出版)
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「いつかは子どもを」と考えつつも、日々の生活や仕事に追われているうちに、“出産適齢期”の上限とされる35歳を過ぎてしまう。万人に共通するベストな「産み時」なんてないけれど、タイムリミットも存在する。そんな悩みを解決すべく生まれたのが、「卵子凍結」という医療技術である。

-196℃の願い 卵子凍結を選んだ女性たち』の中では、年齢も育ちもキャリアも違う8人の女性が登場する。第6回は、田村美咲さん(仮名・45歳・食品メーカー)の声を再構成して紹介する。

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 都内にある食品メーカーで、部長を務める田村美咲さん。38歳で卵子凍結したが、昨年44歳の時、保管していた卵子を廃棄する決断をした。複雑な思いだったが、同時に「これでやっと産むかどうかという長い迷いから解放されて、次に進むことができる」と安堵も広がったという。

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卵子凍結のきっかけ