現在のパートナーと出会ったのは、それから半年後のことだった。友人らの集まりで出会ったのが最初で、「落ち着いていて話しやすい人だな」というのが第一印象だった。相手は6歳年上の男性で、前妻との間に子どもが1人いる。仕事熱心で、グルメで、サーフィンが好きな人。彼と一緒に過ごす時間は楽しく、自然と「この先の人生を一緒に過ごしていきたい」と思えた。1年ほど交際し、同棲するようになった。

 田村さんに部長職の打診があったのは、ちょうど同棲が始まるぐらいの時期のことだった。20代から仕事中心の生活を送ってきて、必死に努力もしてきた。同僚が結婚や出産を機に会社を辞めたり、仕事をペースダウンして家庭と両立する姿を横目に、常に第一線に立ってここまで踏ん張ってきた。昇進はこれから先のキャリアにおいても、きっとプラスに働く。パートナーも昇進を喜んでくれた。二つ返事で承諾し、部長職についたのが、41歳のことだった。

 パートナーとの間に「結婚しようか」という話が出始めた頃、その流れで、「実は私、卵子凍結してるんだよね」と打ち明けた。それまでパートナーは、新たに子どもを持つことは考えていなかったようだった。だが、田村さんの話を静かに聞いた後、「チャレンジしてみても良いんじゃないか」「僕との子どもについて考えてくれてありがとう」と言ってくれた。

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