昨シーズン終盤に失速した広島は内野手に注目が集まる。セカンドが菊池涼介、サードが小園海斗、ショートが矢野雅哉というのが基本的な布陣となるが、今年のキャンプでは二俣翔一が大きく成長。加えて林晃汰もここへ来て長打力を発揮してきている。また現在は怪我で出遅れているものの、ドラフト1位ルーキーの佐々木泰にかかる期待も大きく、3年目の内田湘大も練習試合などでは積極的に起用されていた。

 守備面などを考えるとレギュラー3人の牙城は高いように見えるが、チームは得点力不足に悩んでおり、打撃を伸ばしたい若手も積極的に起用したいという思いもあるのではないだろうか。また外野がやや手薄なことを考えると、コンバートを検討する選手が出てくる可能性も高い。次のレギュラーをどう固めていくかが今後のチームの大きなカギとなりそうだ。

 パ・リーグでは日本ハムの外野陣も有力選手が多い。松本剛、万波中正と昨年ブレイクした水谷瞬の3人がレギュラーに最も近いと見られるが、他にも実績のある浅間大基、スピード自慢の五十幡亮汰、長打力のある今川優馬、二刀流の矢沢宏太なども控えているのだ。またさらに現役ドラフトで加入して打撃の良い吉田賢吾も捕手登録ながら、外野でも起用されており、競争はさらに激しさを増している印象だ。

 先日のオープン戦では万波が怪我で途中交代となった際にも、新庄剛志監督は代わりの選手はいると話している。それを考えると万波であっても油断できない状況であることは間違いない。場合によっては昨年のレギュラーが一気に入れ替わるということがあってもおかしくはないだろう。

 レギュラーの候補選手が多いということはそれだけ安心な材料でもあるが、ポジションによって偏りが出てくるというのはチームの編成上望ましいことではない。また現役ドラフトの結果を見ても、機会があれば大きくブレイクする選手はまだまだ隠れているはずだ。

 NPBはどうしてもトレードには否定的な見方が強いが、戦力がだぶついているのであればトレードも含めて検討すべきではないだろうか。7月末までまだ期間は残されているだけに、シーズン中にも積極的な動きがあることを期待したい。(文・西尾典文)

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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