
卵子は年齢とともに老化し、妊娠・出産しづらくなる。そのため、今すぐには妊娠・出産を考えられなくても、いざ「子どもがほしい」となった時に備え、採取した時点での卵子を凍結保存しておく医療技術が注目されている。しかし実際に、凍結卵子が使われて、妊娠・出産に至るケースは、思ったより少ない。その背景には何があるのか?
『-196℃の願い 卵子凍結を選んだ女性たち』には、年齢も育ちもキャリアも違う8人の女性が登場する。第4回は、小川幸恵さん(41歳・外資系コンサルティング企業)の声を再構成して紹介する。
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40歳の誕生日を迎える1カ月前のことだった。小川幸恵さんは3回の採卵手術で合計18個の卵子を採取し、凍結した。「“私には凍結している卵子がある”ということが心のお守りになってくれている気がします」
小川さんは大学卒業後、海外の大学院に留学。経営学を学んで帰国後、コンサルティング企業に就職し、現在の会社が2社目だ。多忙だが仕事は順調で、4年前に管理職になった。
望んだ仕事に就き、十分な収入もある。平日は仕事が中心だが、休日はダンスやピラティス、美術や映画鑑賞、旅行など、やりたいこともたくさんある。周りには独身の友人も多く、毎日が十分に充実していた。