―― 親から「孫がほしい」と言われたことはある?
「ない。一度もない。うちは両親が離婚してるのもあって、両親ともにまず結婚ってものを信用してない。それもあってなのか、親から結婚しろとも、孫がほしいとも言われたことがない。なのになぜか、私がそう思い込んじゃってるんだよね」
その気持ちは、私にもよく理解できる。親に孫を抱かせる=親孝行。子どもを産んでこそ、一人前――。それらは、抗おうと努力はしながら、私にもどこかで刷り込まれてしまっている価値観だ。例えば私自身が、久しぶりに会った親戚から、何気なく投げかけられたこんな一言。
「お父さん、お母さんを、早くおじいちゃん、おばあちゃんにしてあげてね」
これは、“孫を産む=親孝行”というマインドが根底に潜んだ一言だと思う。親戚とはいえ他人から、「してあげてね」と言われる筋合いがどこにあるのだろうと思うのだが、悪意がないのは分かっている。こういう場面では、目くじらを立てず、「ははは〜」と適当に流すのがもっとも無難だと、これまた無意識に心得てしまっている。
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