松岡かすみ『-196℃の願い 卵子凍結を選んだ女性たち』(朝日新聞出版)
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「いつかは子どもを」と考えつつも、日々の生活や仕事に追われているうちに、“出産適齢期”の上限とされる35歳を過ぎてしまう。万人に共通するベストな「産み時」なんてないけれど、タイムリミットも存在する。そんな悩みを解決すべく生まれたのが、「卵子凍結」という医療技術である。

 著書『-196℃の願い 卵子凍結を選んだ女性たち』の中では、年齢も育ちもキャリアも違う8人の女性が登場している。昨日に引き続き第2回は、木村和子さん(仮名・41歳・外資系金融機関)の声を再構成して紹介する。

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 外資系金融機関に勤務する木村和子さん(仮名・41歳)。海外の大学院を卒業した後、コンサルティング会社に就職。その後、ワーキングホリデーで欧州に渡航中に、現地にある日系の金融機関で働き始めた。

 その後、約3年間の海外勤務を経て帰国したのが、34歳の時だった。以来日本でのキャリアを着実に築き、今は大手外資系金融機関の、望むポジションで活躍している。同業種から転職の誘いも多く、順風満帆なキャリアを築いている。

 仕事は好きだ。やりがいもあり、誇りを持って働いている。だが、パートナー不在のまま40歳を迎えたのを踏まえると、今になって、「少し仕事中心で来すぎたかもしれない」ともこぼす。無論、好きな仕事を頑張ってきた結果、プライベートが少しばかり後回しになってしまったことに後悔はない。だが年齢を重ねる中で、「もっと他にできたことがあったんじゃないかと思う時もある」という。

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親に孫を抱かせてあげたいから