写真はイメージです(写真:Getty Images)
この記事の写真をすべて見る

 コロナ禍以降、一気に広がった端末を使った注文形式。人員削減にもなり、今後も増えるとみられるが、客の心情は大歓迎とは言い難く──。 AERA2025年3月24日号より。

【物価高に負けない!】ポイント5大経済圏の攻略法はコチラ

*  *  *

「俺のギガに“タダ乗り”しやがって」

 都内の会社員男性(23)は、飲食店でよくそう思う。コロナが明けた頃からだろうか。居酒屋やレストランに行くと、メニュー表ではなくQRコードを印字した紙を渡されることが多くなった。

 スマホのカメラをかざすとドリンクやフードのメニューが表示され、そのまま注文できる。初めて持った通信機器はガラケーではなくiPhoneのスマホネイティブ。操作自体は難なくできる。だが、バッテリー残量や通信料がどうしても気になる。

通信費の客負担はナゼ

「友達と集まったときは自分が注文係になることも多くて、なんだか腑に落ちない。せめてタブレットを設置してほしいです」

 自分のスマホを使った注文にモヤモヤしているのは、この男性だけではない。SNSでは議論が度々繰り返され、争点になるのは決まって、通信費をなぜ客が負担せねばならないのか。アエラのアンケートでも「スマホで注文するのが嫌な理由」を回答した36人中11人が通信費を挙げた。

 そんな声もあってか都内ではWi−Fiやコンセントを設置する店を見かけるようになった。それが普及すれば一安心か。そう思いきや、こんな事情からスマホオーダーを嘆く人もいた。

「子どもが小さいので、スマホを取り出すと触りたがって騒ぎだすんです」

 と教えてくれたのは、子育て中のアメリカ在住女性(45)だ。確かに、とうなずく人も多いのでは。他にも「高齢者にはわかりづらい」「食事中にスマホをいじりたくない」「LINEの友だち追加が必須のものがあるのが煩わしい」といった声が寄せられた。

 だが、世はデジタル化に加えてコロナ禍がもたらした非接触時代。端末を使った注文形式は年々広がっている。初期投資の少ないスマホオーダーは小規模店にとってハードルが低く、導入もしやすい。リクルートの調査では、2021年に26.0%だったセルフオーダーの利用経験率は24年調査で57.1%と2倍以上に増加。同社の品川翔さんは、「導入店舗は今後も加速度的に増えていく」と見る。

次のページ
スマホ限定メニューを