となれば、定数は、「金利」といったときに一般人が自然と想起する値である1桁%(民法において当事者間に取り決めがない場合の法定金利は、以前は5%、現在は3%)で計算した場合に、真の値に近い値が出る数値がいいでしょう。正しい補正値は四捨五入して整数とした場合、金利が1〜3%の場合は「70」、4〜6%の場合は「71」、7〜9%の場合は「72」、10〜12%の場合は「73」です。

 そして、もともと多少の誤差は許容する前提で、指数方程式の解を単純な「割り算」で求めようとしているのだから、定数は割り算に適した数がいいに決まっています。割り算に適した数、それは約数の多い数です。69.3より大きくて約数の多い数、かつ、3〜10%程度で真の値に近い答えが求められる数、それが72なのです。

 この72が選ばれた本質を知らずに「72÷金利=2倍になる年数」という「やり方」だけしか頭に入っておらず、普通預金の金利0.001%を引き合いに出して、「72÷0.001=72000、なんと7万2千年!」とやってしまっているYouTube動画がいくつもありました。

 本質を理解していれば、0.001%なら補正がほとんど必要ないから「69.3÷0.001=69300」と計算して、ほぼ真の解(69315.064…)に近い値を求めることができます。

 もちろん普通預金の金利がいかに低いかをアピールするのが目的なら、約2700年も誤差のある「72000年」の計算結果を使ってもいいでしょうが(2700年といっても割合で言えばたかが4%程度ですから)、同じアピールをするなら「100万円預けても年間で利息は10円です」と言った方が、72000年よりはよっぽど金利の低さがイメージできるのではないでしょうか(数学的にも概算でなく正確な値だし)。

あのシーンはもっとうまく計算できた!

 以上を踏まえて「御上先生」の件のシーンを検討してみましょう。72が選ばれた理由をもう一度確認すると次の2つです。

次のページ
意外とラクに計算できた?