ドラマで使われた金利は0.5%と0.125%でした。まず、1%以下なので72では大きすぎると意識する必要がありました。

 次に、女子生徒が72÷0.125を素早く暗算したシーンを見て「そんなに早く計算できっかよ!」とツッコミを入れた方いませんか? できるんです! 誰でも。なぜなら、0.5や0.125は「割り算に適した数」だから。

 と、実は2つとも簡単な掛け算に変換できます。つまり、「割る数」が計算を楽にする「いい数」なのです。そのため、「割られる数」は72でなくても計算は容易だから、本来の値に近づけるためにもう少し小さくしようと思えるのです。

「ドラマでここまでやれ」というわけではないが……

 以上を踏まえて、あらためて近似値を計算してみます。年利が0.5%で元本が2倍になる期間を計算すると、正確な値は、

 となりますが、その近似値は、72を用いて「72÷0.5=72×2=144」とするよりも、もう少し小さい70を用いて、「70÷0.5=70×2=140」。または、(÷0.5)はすなわち(×2)だから、小数でも「0.5」なら計算は楽なので、金利が0に限りなく近い場合の本来の「割られる数」である69.3に近い69.5を用いて「69.5÷0.5=69.5×2=139」とすると、かなり近い値となります。

0.125%の場合は、

 となりますが、「72÷0.125=72×8=576」より、「70÷0.125=70×8=560」か、運良く、「69.5=(70-0.5)」なので、「69.5÷0.125=69.5×8=(70-0.5)×8=560-4=556」と工夫すれば真の値に近い値を暗算で求めることができます。

 もちろん、あくまで本質をわきまえればこうなるというだけで、「ドラマでここまでやれ」というわけではありません。

 (鈴木貫太郎/数学YouTuber)

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