
ついに最終回を迎える、松坂桃李主演のTBS系ドラマ日曜劇場「御上先生」。そのepisode5で紹介され話題となったのが「72の法則」だ。数字の「72」を金利で割ることで、元本が2倍になる期間がざっくりとわかる数式だが、一体どういう理屈なのだろうか?
吉岡里帆演じる「是枝先生」も戸惑った計算式を、登録者数14万人超えの数学YouTuber、鈴木貫太郎さんが解説する(4月11日発売の朝日新書『マイナス×マイナスはなぜプラスになるのか』から一部抜粋・編集)。
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TBSのドラマ「御上先生」の中で、投資について自主的に学んでいる生徒のグループが、「老後の資金は手堅く定期預金」という若い女性教師・是枝先生に、「72の法則」を説明するシーンがありました。
生徒A「今、定期預金の利子の高い銀行でも、年利0.5%くらいなんですね」
生徒B「元本が倍になるのに必要な年月は、72を金利で割ることによって求められるんです。72を0.5で割ると、なんと144年です」
是枝先生「ええ? 本当に?」
そこに御上先生が割って入り、「しかも大手銀行の場合、今だいたい年利0.125%ですからね」
それを聞いた女子生徒Cが素早い暗算で、「72÷0.125は……576年」
是枝先生「うわあ、それは無理だ」
このシーンに文句はありません。元々の目的は、0.5%という超低金利では資産運用が難しいことを伝えることなので、より正確な値には意味がないからです。限られた時間に「72の法則」を詰め込むならこんなものでしょう。
でも、時間に余裕があり、本質を理解していたらどうなるでしょうか。
「72の法則」とは何なのか?
金利がr (= 100r%) のときに、資産が2 倍になるまでの年数をn年とおくと、nの方程式は次のような指数方程式になります。

これを解くために、両辺に底がeの自然対数をとります(底は1以外の正の数であればいくつでもいいのになぜeを選んだかは後で説明します)。

※以降、文章上では、底がe、真数がxの対数をlog(e)xと表記します
ここで、分子のlog(e)2 は定数なので、log(e)2=0.693147……と覚えていればいいのですが、分母のlog(e)(1+r)、例えば3%ならlog(e)(1.03)=0.02955……を四則演算しかできない電卓で求めるのは容易なことではありません。