そこで、log(e)(1+r)を何か計算が楽なものに変えられないかと考えます。y = log(e)(1+x)のグラフを書いてみると、次の図のようになります。

 ここで、金利というのは高くてもせいぜい10%(=0.1)程度なので、x=0~0.1付近でこのグラフに近似できる直線の式を考えます。それにはy=log(e)(1+x)の原点における接線が最適でしょう。

 接線の傾きを求めるのには微分が必要ですが、対数関数を微分するには、底がeであると下記のようなシンプルな分数式となり、都合がいいのです。

 y=f(x)=log(e)(1+x) とおくと、微分した式は、

 したがって、原点(0,0) における接線の傾きは、

(このシンプルでとても都合のいい値も底をeにしたおかげ)

 接線の方程式は、原点を通る傾き1の直線なので、y=xとなり、下図のようになります。

 x=0~0.1付近では、log(e)(1+x)≒x、つまり2つのグラフはほぼ同じところを通っていると考えてよさそうです。そこで、最初に解いたnの指数方程式は、

 と単純な「割り算」で概算できます。ただ、実際には、

 なので、割る数(分母)が真の値より少し大きい、すなわち、答えが真の値より少し小さくなってしまいます。そこで、定数である割られる数(分子)を少し大きくすることによって補正します。69.3 を少し大きくして、かつ、キリのいい数、70、71、72、73……いくつがいいでしょうか?

グラフをよく見ると……

 グラフを見れば分かる通り、2つのグラフはx=0のときに接し(値が一致)、xの値が大きくなるにつれて差が広がっていきます。すると、金利が0に近ければ補正の必要はほぼなくて、70でも大きすぎます。また、利息制限法違反の年利30%で営業(?)している闇金業者なら、補正値は79にしなければ真の値に近い値は求められません。

 金利ごとに補正値を修正するというのは、本来の正しい答えが出る指数方程式をきちんと解く作業をしているのとほとんど同じで、面倒な指数方程式を解かずに簡単な「割り算」で概算値を出すという趣旨に反します。やはり定数は何か1つに決めておく方が汎用性が高くて便利でしょう(所詮概算ですから)。

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結局、いくつで計算すればいいの?