実際の請求。このうち本人使用分は983円だったという(トモコさん提供)

「問題があるのでは」とライバル社

 同一名義での大量不正契約をされた携帯電話は特殊詐欺などの犯罪で使用されてきた。そのため、警察庁や電気通信事業者協会は、「原則として」、個人による契約回線数を5回線までに制限してきた。

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの契約数は5回線までで、追加契約には本人確認が必要だ。一方、楽天モバイルは1つの楽天IDで最大15回線まで契約可能で、追加契約には本人確認書類の提出は不要となっている。逮捕された中高生はこの脆弱性に目をつけ、回線を不正に契約したとみられる。なぜ、楽天モバイルでは他社に比べて回線数の上限が2倍以上多く、本人確認も甘いのか。スマホジャーナリストの石川温さんは、こう語る。

「楽天モバイルは新規参入の会社なので、他社スマホからの乗り換えに特に力を入れ、とにかく契約者数を増やそうとしています。そのため、回線数の上限も本人確認も緩和したいのでしょう」

 楽天グループの三木谷浩史・会長兼社長は「乗り換えの手間が煩雑」だとして、本人確認の簡略化に力を入れてきた。

 楽天モバイルは2023年7月、楽天カードの所有者に対して、本人確認書類の提出が不要な「Rakuten最強プラン(データタイプ)」の提供を開始した。

 これに対して、ソフトバンクの宮川潤一社長は、次のように述べている。

「ちょっと問題があるのではないか。本人確認については犯罪防止の観点から非常に重要だと理解している」(24年8月4日の決算発表で)

 楽天モバイルの音声通話の契約についても、楽天銀行、楽天証券、楽天生命に提出しているいずれかの本人確認情報を「Rakuten最強プラン」申し込み時の本人確認に使用することが可能となっている。

不正契約発覚は氷山の一角か

 2年前、三木谷氏が「本人確認をしないで他社から乗り換えられる仕組みを導入する」と発言したとき、「そんなことをして大丈夫なのか。業界内では懸念された」と石川さんは言う。

「結局、楽天モバイルが本人確認書類の提出が不要なプランを導入すると、回線が不正契約される事案が発生し、同社は注意をうながすようになった。やっぱり、そうなるよな、と思いました」(石川さん)

 楽天モバイルは不正を検知するモニタリングを24時間365日実施しており、不正に契約された回線を検知した場合、パスワードのリセット、契約者への通知、回線の利用停止、契約解除などの対応を随時行っているという。

「今回の不正契約について、通知は一切なく、こちらから問い合わせて発覚した。不正契約に気づいていないユーザーは相当数いるのではないか」と、先のトモコさんは怪しむ。

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