イラスト:サヲリブラウン
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 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 柔らかな春の日差しとともに、今年もアレがやってきました。ご存じ花粉です。

 毎年悩まされている割には決定的な打開策を打たず、長い時は1カ月半、短い時は数週間、鼻をグズグズさせています。そんなことを20年以上やっているのかと思うと、生活に支障は出るが命に別状がない期間限定の不愉快に対する己の不要な耐性に呆れます。

 手を打っていないわけではないのです。病院に行ってアレルギー用の薬を処方してもらう年もあります。ここ数年は、ビフィズス菌や乳酸菌のサプリでしのいでいました。

 症状と発症期間がまちまちなのも、根本的解決を後回しにしてしまう理由のひとつです。鼻水がひどく出る年もあれば、皮膚に炎症が出る年もある。どちらも、睡眠に支障が出るほどではないせいで、根本的解決に取り組まずのらりくらりしてしまう。

 たとえるなら、衣替えの時だけ開ける押し入れの扉の建て付けが悪いような状態。これがトイレの故障だったら、すぐに修理を呼びます。でも、年に一度だけ非常に不便、という程度だと放置してしまう。そもそも、花粉症に根本的解決が存在するのかわかりません。完治したという人の話を聞いたことがない。

イラスト:サヲリブラウン

 そういえば、東京都知事はスギやヒノキを伐採する公約を掲げていたはず。あれはどうなったのかと調べてみると、一応「花粉の少ない森づくり運動」というプロジェクトは進行しているようです。ウェブサイトを見てもどれほどの成果が上がっているのかは私にはわかりませんでしたが、気が遠くなるほど長い時間が必要なことは理解しました。私のような素人は、バンバン伐採しちゃってよ!と思うけれど、そういうわけにもいかないのでしょう。都がどれほど力を入れてこの運動を進めているのか不明ですが、こういうことはたいてい現場の人は誠意をもってやっているので、あまり悪し様にも言いたくありません。

 それにしても、今年は症状がひどくなりそうな予感。花粉症対策用のサプリは早くから飲んでいたというのに無念です。サプリの種類を今年から変えたからかしら……。

 この号が出る頃には、ポッドキャスト番組の武道館公演が目前です。鼻をズビズビしながらお客様をお迎えするわけにはいきません。

 なんとかせねば!と焦りつつ、今年も対症療法でしのいだあとは忘れるのだろうな。

AERA 2025年3月17日号

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