かつては「職場結婚」という感覚だった

 かつて、プロ野球選手と女性アナウンサーが取材現場や会食の席で意気投合して交際に発展し、結婚するケースは珍しくなかった。日米で史上初の野球殿堂入りしたイチロー氏(現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)は元TBSアナウンサーの福島弓子さん、元巨人監督の高橋由伸氏は元日本テレビアナウンサーの小野寺麻衣さん、元ヤクルト監督の古田敦也氏は元フジテレビアナウンサーの中井美穂さんと結婚している。まだまだ例はあげられる。

「地上波でプロ野球がテレビ放送されていた2000年代前半までは、女性アナウンサーがグラウンドに取材に来る機会が多かった。SNSが今ほど普及していない時代でしたし、選手は女性と出会いの場が意外に少ない。メディア側も、選手と女性アナウンサーは『職場結婚』という感覚でしたね」(スポーツ紙デスク)

 しかし、地上波のプロ野球中継は減り、女性アナウンサーがグラウンドで取材をする機会も減った。また、SNSの普及により、顔が知られている野球選手や女性アナウンサーが会食すること自体、リスクが大きくなっている。

「いまは野球選手が会食しただけでも一般の人にスマホで写真を撮られ、拡散されるケースがある。誤解を避けるためにも、女性アナウンサーが選手と会食に行くことに慎重になっていると聞きました」(前出のスポーツ紙デスク)

若い選手は女性アナウンサーを知らない

 さらに、現役でプレーする選手の感覚も変化している。かつては選手が触れるメディアといえばテレビが主流だったが、現在はYouTubeや有料動画配信サービス「NetfliX」など、選手たちの視聴コンテンツも多様化している。

 在京球団の20代の選手がこんな話をする。

「普段はYouTubeを見たり、ゲームをしている時間が長いですね。テレビは部屋に置いていなくて、見る習慣がないんです。だから女性アナウンサーの名前とかも全然分からない。一度、会食の席で民放の女性アナウンサーがいらっしゃったのですが、全然分からなくて。先輩の選手に『何で知らないんだよ』と呆れられました」

 スポーツ紙記者はこう語る。

「20代の選手からすれば、女性アナウンサーを会食の場に呼ぶという感覚がピンとこないのでしょう。女性アナウンサーを会食の場に呼んで選手と仲良くなろうという一部のメディアの人間の考え方が、時代遅れなのかもしれません」

(今川秀悟)

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