合意文書を交わした3党代表。左から維新の吉村代表、自民の石破首相、公明の斉藤代表
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 与党の自民党と公明党、野党の日本維新の会の3党幹事長が3月3日に会談し、4日の衆議院本会議で、2025年度の予算案に賛成することで合意した。少数与党の自公にとって、予算案を通すという大きな懸案が解決した。一方、維新内部には不満の声が噴き出ており、分裂の可能性が高まっている。

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 幹事長合意の前段となったのが、2月25日にあった石破茂首相と公明の斉藤鉄夫代表、維新の吉村洋文代表(大阪府知事)の3党代表の会談。3代表は当初予算案修正の合意文書を交わし、維新は「高校授業料無償化」など掲げる政策を実現するため、与党を助ける形となった。

「国民民主党が『103万円の壁』の解消のために高めのボールを投げてくる。過半数まで必要なのは13議席。国民民主がダメなら維新で行こうと、石破首相が早々に決断してよかった。予算の目途がついて一安心だ」

 こう安堵の表情で話すのは自民党幹部の国会議員だ。

 予算案を通過させるため、自公は当初、国民民主が掲げる年収「103万円の壁」の引き上げ協議によって国民民主から賛成を取り付けようとした。だが、国民民主は与党案の「160万円」への引き上げではなく、「178万円」を主張。この主張をのめば7兆円規模の税収減が見込まれることもあり、もっと“安価”に実現できる「高校無償化」などを掲げる維新との協議に傾いていった。

 自民党の元政務調査役で政治評論家の田村重信氏は3党合意の背景に、石破首相と維新の前原誠司共同代表との親密な関係をあげる。

「石破首相も前原氏も安保族であるとともに、2人とも鉄道オタク。共通の話題も多くある。石破首相は前原氏との強い関係があるので、早々に国民民主党を見限って、維新との3党合意で政権を安定させようという狙いだったのではないか」

 吉村代表は3党合意について、
「維新の公約が実現できる。大きく前進した。今までできなかった、全国での教育無償化を実現できる。社会保障改革も、現役世代への負担が偏っていた。それを修正できる合意が締結できた。公約を実現させ、社会を変えたい」
 と胸を張り、与党との連立については「それはありません」と否定している。

 ただ、3党の合意書には、
〈合意後も引き続き、自民党、公明党、維新の3党の枠組みで、合意事項の実現に責任と誠意をもって取り組む〉
 とあり、今後も3党で“連立”のように、政策協議を推し進めていくことになりそうだ。

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維新案を採り入れるのは激安だった?