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 コロナ禍の日本で大流行した韓国ドラマと言えば「愛の不時着」。見たことがある人なら、主人公たちが「bb.q」のチキンを食べるシーンが繰り返し描かれていたことを覚えているだろう。

 韓国通のみなさんはご存じかもしれないが、あの場面、実はれっきとした「広告」だ。逆に、韓国ドラマでは洋服のロゴマークや車のエンブレムにモザイクがかかっていることがよくある。なぜ、こんな真逆ともいえることが起こるのか。

 発売されたばかりの『今さら聞けない 現代韓国の超基本――ドラマ・文学・K-POPがもっとわかる』が、この背景を詳しく解説している。本から引用する形で紹介したい。

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 韓国のドラマは1話の中に入るCMが少ない代わりに、劇中で宣伝をする「PPL(Product Placement)が多く用いられる。出演者が食べたり使ったりすることが、特定の商品の宣伝になっていて、ドラマ「愛の不時着」で何度も登場した「bb.q」のチキンもこのケースだ。

 いまや韓国国内には約8万のチキン店があり、これは全世界のマクドナルドの店舗数よりも大きい数字だ。「bb.q」はなかでも大手のチキンブランドで、世界57カ国で700店舗を展開している。2023年の海外での売り上げは、前年比69%増の1100億ウォンに達している。日本でも、「愛の不時着」以降、韓国チキンの店が相次いでオープンしている。

photo iStock.com/Promo_Link

 同様に、中国では、2013~14年のドラマ「星から来たあなた」をきっかけに「チメク(チキン&ビール)」が流行したし、アメリカでは2022年のドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」をきっかけに冷凍キンパのブームが起きた。

 2020年に米アカデミー賞で作品賞をはじめとする4冠を獲得した映画「パラサイト 半地下の家族」は、「ジャパグリ(チャパグリ)」を世界的に流行させた。ジャパグリは、韓国のインスタントラーメン「ジャパゲティ(チャパゲティ)」と「ノグリ」を混ぜたもので、アカデミー賞受賞以降、この2商品の売り上げは大幅に伸びたという。

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