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長野市の善光寺で6年に1度(数え年で7年に1度)開かれる「御開帳」の次の開催が、2027年4月4日~6月19日の77日間と決まった――。2024年11月、そんなニュースが流れた。「御開帳」とは、仏教寺院において、特定の日に厨子(ずし)の中の秘仏を公開し、人々に拝ませること。その開催がニュースになるのは、多くの人々が集まり、大きな経済効果がもたらされるからだ。
善光寺の場合、コロナ禍で1年遅れの22年に88日間の開催となった前回は636万人が訪れ、経済効果は1095億円にのぼったとされる。これほど多くの人を引き付ける仏像だが、参拝するにあたってはいくつかのポイントがある。
駒澤大学仏教学部の村松哲史教授が監修し、種智院大学人文学部の長谷法寿教授が仏画を担当した『疑問がすべて解ける 超図解 仏像大事典』は、仏像の前で手を合わせたときに浮かぶ様々な疑問、例えば「この仏像は何の目的で作られたのか」「どんな素材でできているのか」「この手の形は何を意味するのか」といったことを事細かに解説している。
ここでは、本から引用する形で、仏像の「手」や「台座」が伝えようとしているメッセージを読み解きたい。
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言葉の代わりに仏の意志を示す「印」とされるのが手だ。仏像の手もとに注目すると、何も持たずに指を曲げたり伸ばしたり、手話のごとく何かを伝えているようなしぐさが見られる。これを「印(いん)」または「印相(いんそう)」「印契(いんげい)」と言う。指で様々な形を作ることを「結印(けついん)」または「契印(けいいん)」と呼び、印は仏の誓願(意志)を表すものとされている。
数種類ある印のなかで、基本は釈迦如来像(ブッダ像)に示されている。その第一が「施無畏印(せむいいん)」と「与願印(よがんいん)」で、日本では釈迦如来像以外にも、薬師如来像、弥勒如来像、盧舎那仏像などで見られる。