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日本の銀行で取り扱っている貸金庫の大半は、鍵を使うタイプといい、差し込み型の鍵やカードキーを使うもの、両方を併用しているものがある。鍵を使わないタイプでは、認証型やダイヤルキー型のものもあるという。
地銀幹部によると、鍵の場合、客が正鍵、銀行側がスペアキー(副鍵)をそれぞれ持つ。副鍵は封筒に入れられ、割り印として客の実印を数カ所に押し、保管する。副鍵は災害などの非常時に限り使用できると定めている。解錠の際は、客が持っている鍵と、銀行側のマスターキー(副鍵とは別)で開ける仕組みだ。
「ここまでの金庫の開け方と鍵の保管方法はほとんどの銀行が同じだと思います」(同幹部)
重要なのは、金融機関によって管理方法が異なる副鍵の取り扱いだという。
「うちの場合、副鍵は支店で管理して、本部の担当者が数カ月に一回、割り印が破られていないかチェックしにきます」(前出・地銀幹部)
「副鍵は支店で預かっていますが、どこでどのように管理されているかは副支店長以上の役職の人しか知りません。マスターキーも同様です」(首都圏・信金主任)
「三菱UFJの件が起きてから、支店管理だった副鍵を本部に預けることになり、権限を持った人しか触れないようになっています」(首都圏・信金職員)
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三菱UFJの元行員による総額約14億円の窃盗事件では、元行員は当時、支店長代理を務め、貸金庫の管理責任者だった。支店内で管理していたマスターキーと副鍵を使って金庫を開け、窃盗を繰り返していたという。副鍵をどのように取り出し、戻していたのかなど手口については明らかにされていない。