今回、被害額の大きさやメガバンクという点が重なり、大きなニュースとして報じられているが、これまでも金融機関の貸金庫から、行員ら関係者が現金などを盗んだ事件は起きている。
識者「UFJのように本店一括管理が好ましい」
元メガバンク支店長で現在は「お金の専門家」としてさまざまな活動をする菅井敏之さんは、貸金庫の現状について、こう指摘する。
「貸金庫サービスはこれまで長い期間不祥事が極めて少なかったため、検査対策の更新が講じられてこなかった。ただ、今回の事件で前提は崩れました。副鍵を支店で保管しているから窃盗が起きる。三菱UFJは副鍵を支店から物理的に切り離し、本部一括管理に切り替えましたが、再発防止策としては有効です」
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たしかに、三菱UFJの事件を受け、副鍵の保管を支店から本店に移すことを決めた金融機関も多いようだ。
菅井さんによると、三菱UFJではこれまで、支店で管理されている副鍵が悪用されていないか、第三者機関が半年に一度、点検をしていたというが、今回の悪用は見抜けなかったようだ。
前出の信用金庫の職員は、「事件が報じられてから、『預けているのが不安になった』と解約する顧客が出ている」と話す。
いま各金融機関では、貸金庫での被害がないか一斉調査が行われているという。菅井さんがこう指摘する。
「貸金庫のルールが各金融機関で分かれており、安全性が十分とは言えません。金融庁には各行の調査結果を踏まえ貸金庫業務の監督体制を強化し、厳格に管理している事例を共有するなどの取り組みが求められます」
(AERA dot.編集部・板垣聡旨)
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