厚底シューズは推進力に優れるが、底が厚いぶん、着地が不安定になる。軽量化のため、特にかかとを包む部分が薄く、ブレの防止機能は最低限にとどめられている。

 東海大学スポーツ医科学研究所などの調査によると、適切なフォームで、ブレずに足を進める筋力がないと、厚底シューズは効果を発揮しない。

 フルマラソンを無理なフォームで走り続け、着地のたびに足がブレるとなれば、足にダメージが蓄積されていく。

「ひどくなると、足がけいれんしたり、膝が痛くなったりして、走れなくなってしまうこともある」

アシックスの定番ランニングシューズ「GT-2000 13」=茂成潤さん提供

昔からの定番シリーズがおすすめ

 一般市民ランナーにとって、走りやすいシューズとはどんなシューズなのか。

「安定性とクッション性のある、『足を守ってくれるシューズ』です。足首を支持する『ヒールカウンター』が硬くしっかりしている。前の部分は、足をしっかりと包み込んでくれるフィット感の高いものがよいです」

 カーボンプレート入りの厚底シューズは200グラム前後だが、280グラム前後の重量のある製品のほうが、初心者は安心して走れるという。

 茂成さんのおすすめは、アシックス「GT-2000 13」と、ミズノ「ウエーブライダー 28」。どちらも約30年前から作られている定番シリーズだ。

「履くと、フィット感があり、足が包まれて守られている感じがします。心持ち、アシックスのほうがかっちりしていて、ミズノはやわらかい。好みで選べばいいと思います」

 海外メーカーだが、日本人の足形を意識して作られた製品もある。アディダスの「アディゼロ」シリーズはジョギング用からレース用まで豊富なラインアップがあり、レーシング(競技)寄りのモデルがよく売れているという。


 走るペースによって、合うシューズも変わるという。

 フルマラソンにはさまざまなペースがあるが、レース全体を同じ速度で走る「イーブンペース」や、後半に速度を上げる「ネガティブスプリット」が一般的だ。

 たとえば、イーブンペースの場合、4時間で完走するには、1キロあたり5分40秒のペースで走ることになる。このとき、必要以上に軽い靴や、反発力のある靴を選ぶと、スピードが上がりすぎ、後半、足の動きが鈍りがちだという。

「ある程度、レースや靴選びに慣れたら、目標ペースを維持するために、一番安心して走れる靴を選択する。そんな選び方がいいと思います」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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