「そんなことで……」と思うかもしれないが、実際にやるとやらないでは大違い。3つともきっちりやっている人、そんなに多くないのではないか。
みんな一緒が安心
パニック売りには「群衆行動」と個人の性格も関係する。「群衆行動」とは、この場合、株価暴落時に多くの投資家が株を売ることを指す。
みんなが株を売っている中で、自分だけ平常心でいることは簡単ではない。人間は社会的な生き物なので、他の人と同じ行動を取ると安心するものだ。
「人間の本能ですから。みんなが逃げて、同じ方向に走っているときに自分だけ逃げないでいると、動物に食べられる可能性が高まる、というような。DNAレベルの行動といえるかもしれません」
みんなと同じ行動を取りがちか、そうでないかは個人の性格も関係する。同じ行動を取らないと不安で仕方ない人、ある程度は人と違っても平気な人がそれぞれいる。
これに関しても「ビッグ・ファイブ」という、個人の性格診断と投資行動に関する研究が進んでいる。
英国での調査によると、協調性があり、神経質で(学術的には「神経症的傾向が高い」)、外向的な人は貯蓄と投資の金額が少なかった。
米国の調査では、神経質で、開放的な人は資産の中で株式の割合が少なかった。
角谷教授の研究によれば、神経質な人はパニック売りをしがちであるという結果が出た。
個人の性格を変化させるのは難しい。「それはそれ」と受け入れ、金融リテラシーを高め、金融行動・金融態度を改善することに注力していきたい。
取材・文/向井翔太、中島晶子(AERA編集部)

