極端な話、今なら1万円・1週間後なら10万円と言われたら「そりゃ1週間後」というのではないだろうか。

 この「切り替わるポイント」が、あなたの時間割引率だ。少ない報酬でも待つことができる人は、時間割引率の低い人。将来の利益や報酬を今のそれと同じかそれ以上に重視するタイプで、がまん強い人ともいえる。

 逆に、高い報酬がないと待てない人は、時間割引率の高い人。将来より今の利益や満足を優先する傾向が強く、せっかちなタイプといえる。

目の前の快楽に敗北

 ここまで、「今と1週間後」といった「近い将来」を書いたが、これが「90日後に1万円か、97日後に1万円か」でも人により回答は異なる。少し遠い将来の話だ。

 そして遠い将来は待つことができるが、近い将来は待てないタイプの人がいる。これを学術的に言い換えれば「遠い将来の時間割引率よりも、近い将来の時間割引率が高い人」。これが「双曲割引」という概念だ。

 説明が長くなったが、双曲割引は実例で書くとわかりやすくなる。

 たとえばダイエットで3カ月後までに5キロ減量するという長期目標があるのに、目の前のチョコレートケーキ(目の前の快楽)に負けてしまう。

 勉強して来年は試験に合格するという長期目標があるのに、つい、勉強とは関係ない楽しい動画サイト(目の前の快楽)を見てしまう。いずれも双曲割引の「あるある例」だ。

 スーダラ節(昭和の流行歌)の「わかっちゃいるけどやめられない」が双曲割引などという難しい用語にちょっぴり関係していたとは……。

 この例から、双曲割引はある種の衝動性とも解釈できる。角谷教授の研究によると、双曲割引はパニック売りを誘発する傾向が観察されているという。

 では「双曲割引な人」はどうすればいいか。金融リテラシーを身に付け、金融行動・金融態度を改善することで、双曲割引は消失しやすいことがわかっている。

 具体的には何をすれば? 意外に身近なことであり、今すぐできる。

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何をすれば金融力アップ?