利益がでるかもしれないタイミングでのみコインを投げる人である。

 先ほどの「問1」でのみ【選択肢1】(コインを投げて表が出たら2万円もらい、裏が出たら何ももらわない)を選んだ人はパニック売りをしてしまう可能性があるということ。

 逆に損失局面でのみコインを投げる人……先ほどの「問2」でのみ【選択肢1】(コインを投げて表が出たら2万円支払い、裏が出たら何も支払わない)を選んだ人は、統計的にパニック売りをしにくい傾向がある。

 損失を回避したい気持ちが特に強いため、株価下落局面で本当に売ってしまうと「損が確定してしまう」のが嫌(という気持ちが強い)と思われる。

 一方、利益がでるかもしれない局面でコインを投げてしまう人は、損失回避性が低い傾向がある。そのため、損が確定することは気にせず大胆に売ってしまう≒パニック売りをしてしまうと考えられる。

新・金融リテラシー

 角谷教授自身、この調査を行う前は「損失回避性が高い人は二番底、三番底のリスクを嫌ってパニック売りをする傾向があるだろう」と予想していた。だが、実際に調査すると結果は逆だった。

「1万円をもらえる状況と、1万円を払わなければいけない状況の2つがあり、得る金額も失う金額も同じです。本来であれば、どちらも同じ答えであるはず。でも、実際はどちらかだけギャンブルをする方が多いものです」

 角谷教授らの研究によると、金融リテラシー(金融に対する理解度)が高いほどパニック売りをしにくいというデータが出ている。

 余談だが、金融リテラシーの高い人はニコチン中毒やギャンブル依存のリスクが低く、運動習慣があり、健康診断を積極的に受け、特殊詐欺被害のリスクが低いなど、人生のさまざまな場面でリスクを抑えられる傾向が確認されているという。

 最近は「新しい金融リテラシー」が求められているらしい。なんだそれは?

 従来の金融リテラシーは「金融に関する知識、技能」と定義されていた。ただ、現在の金融サービスはネット証券やネット銀行などが昔よりメジャーになり、急速にデジタル化している。もはや金融の知識、技能だけでは不十分。

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自信過剰タイプがまずい