こうしたデジタル化に対応するスキルも含めた新時代の金融リテラシーのことは「デジタル金融リテラシー」と呼ばれ始めている。

「なお、金融リテラシーの定義に関しては現在も議論されており、曖昧さを残しています。『金融の知識のことを金融リテラシーと呼ぶ』とする一大勢力が、まずあります。そして『知識だけでなく行動や程度も含めて金融リテラシーだ』という考え方もあります」

自信過剰な人ほど…

 少し驚いたのが、金融リテラシーがしっかりあるつもりの「自信過剰な人」がパニック売りをしやすい傾向にある、という点。

「ここでいう自信過剰とは、金融リテラシーにおける自信過剰のことです。私の研究室と楽天証券の共同で行った大規模調査で『客観指標の平均より下(投資家平均より知識が少ない)なのに主観評価が高い人』のことを『金融リテラシーにおいて自信過剰』としています」

 角谷教授が言ったわけではないが、未経験ではなく初心者に毛が生えたぐらいの時期か。どんな分野でもそうだが、学べば学ぶほど自分の無知を自覚する。学び始めて少し経ち「基本はつかめたな」などと思う時期が一番危なっかしいような気はする。

 客観指標で悪くない金融リテラシーを持っていたとしても死角がある。自己評価が高すぎて「実際」と釣り合っていなければ(≒自信過剰)、リスクの取りすぎにつながる。そして本物の暴落が来たらパニック売りをしてしまう……。

 では、金融リテラシーが高めなのに自信がなさすぎる人はどうなのだろう。このタイプの人は、株価下落時に果敢に買い向かうことができない傾向が出ているという。

 それにしても、初心者こそ暴落時にパニック売りをするものだと思っていたら(もちろんそれもあるのだろうが)、自信過剰タイプにもその傾向があるとは。

 ネットには、投資経験は数年で2020年のコロナ・ショックすら経験していないようだが、S&P500全世界株式などのインデックス投資信託に関して評論家並みに細かい知識を披露する人がいる。

 そういった、ここ数年で学んだ知識とともに「相場下落時にも積み立てを続けることが大切です!」と。もちろん正しいのだが、実際に自分が体験したら平常心でいられるかどうか。ほぼ貯金なしで投資信託に突っ込んでいる人も見受けられる今、やや不安が残る。

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