知識と経験は別と思ったほうがいいかもしれない。「本当に自分は暴落してもがまんできるくらいの投資額か」を、改めて点検したい。

 パニック売りに関して、本には「金融行動」「金融態度」が優秀な人は暴落時にも間違った行動をとりにくいという一節があった。

「金融行動」は貯蓄や支出など金融に関する意思決定の際の行動様式のこと。

「金融態度」は貯蓄や支出など、個人が金融に対して持つ考え方や感情などのこと。

 この測定はOECD(経済協力開発機構)の評価基準がよく知られている。

 興味深いのが、金融リテラシーと金融行動・金融態度のスコアに性別で違いが出ていること。

 金融リテラシーのスコアは、日本を含む世界各国で男性優位であることが知られている。一方、金融行動と金融態度は、角谷教授の研究によると、少なくとも日本では女性優位であることがわかっている。

 いずれにせよ、金融行動と金融態度も現代を賢く生き抜くために重要な要素だ。

1万円の受け取り方

 少し難しいが「双曲割引」という言葉をご存じだろうか。簡単にいうと「遠い将来は待つことができるが、近い将来は待つことができない」という心理を表す。この言葉を理解するために「時間割引率」を知っておきたい。

 たとえば、今または1週間後に1万円を受け取れるとしたら、あなたはいつ受け取るか? 大抵の人は、今受け取るだろう。

 では、次の質問。

 今もらえるお金は1万円のまま変わらず、1週間後に受け取れるお金が少しずつ増えている。今と1週間後で同額(1万円)なら「今」と答えていた人もどこかのポイントで「1週間後に受け取る」に切り替わるだろう。

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減量中のケーキと双曲割引