ワッキー/1994年にお笑いコンビ「ペナルティ」結成。舞台「Mother~特攻の母 鳥濱トメ物語~」は3月19~23日、東京・新国立劇場・小劇場で上演(撮影/写真映像部・和仁貢介)
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 ワッキーさん(52)が特攻隊員を演じる舞台が約3年ぶりに上演される。中咽頭がんの闘病生活から復活し、強くなった「生きること」への想いをぶつける。 AERA2025年3月3日号より。

【写真】次世代に繋ぐことが社会貢献に・・と語るワッキーさん

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「なんて清らかなのだろう」

 ワッキーさんが初めて「Mother〜特攻の母 鳥濱トメ物語〜」の舞台に立ったのは、2013年のこと。

 稽古を重ねていくうち、自然とそんな想いを抱くようになっていた。当時、演劇経験はなかったが、周囲に声を掛けられたことをきっかけに、特攻隊員の一人を演じた。稽古中、自分が登場しないシーンを見ているだけで涙があふれていく。

「この物語はなんて清らかで、なんて大義があるのだろうって。身体中に衝撃が走ったことを覚えています」

コロナ禍で一時中断も

「Mother」は、特攻隊員が出撃前に訪れていた軍指定の食堂「富屋食堂」を舞台にした実話がベースとなっている。

 ワッキーさんは、当時41歳。漠然とではあるが「社会の役に立つことがしたい」という思いが芽生え始めていた頃だった。「若くして戦地に向かった人々のことを絶対に忘れさせない」というトメさんの言葉に、自身の想いを重ねた。自分がぼんやりと考えていた“社会貢献”とはこの物語を次世代に繋いでいくことなのではないかと思うようになっていた。

「『Mother』で役者デビューをしたわけですが、そこから『色々な舞台に出てみたい』という気持ちにはならなかった。あくまで『Mother』を続けたい、という気持ちでした」

 次世代に繋げていかなければ、という気持ちを皆で共有しながら上演を続けてきたが、コロナ禍により一時中断。3月にスタートする同舞台は、約3年ぶりの上演となる。今年から「プロデューサー」の役割も担うようになった。

「物語を広めていかなければ、続けられない。プロデューサーという肩書を得ることで、お尻に火がつくのではないか、とも思ったんです。自分にどれだけの影響力があるかはわかりませんが、広告塔になり、プロデューサー業もやっていこう、と」

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いつ死ぬかわからない