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いつ死ぬかわからない
企業や高校の演劇部にも自ら足を運んだ。ワッキーさんはそれを“種まき”と表現する。
「『芸人が何をしにきたのだろう』と最初は訝しんでいた方々も、想いを伝えると、その熱量を感じ取ってもらえるのか、『社員を連れて行きます』『芸術鑑賞会として皆で観に行きます』と答えてくれるようになる。僕の話を聞くにつれ顔つきが変わっていく人々を前にすると、まるで“教師”にでもなったかのようで、『教えることの醍醐味ってこういうことなのかな』なんて、味わったことのない感覚を得ることもできました」
20年には、中咽頭がんと診断され、闘病生活を送った。その頃から、自身の「役割」について深く考えるようになった。
「がんと闘うなかで、ものすごいパワーを使いましたし、いまも完全には戻っていないところもあります。全体的なパワーが落ちていくなかで、『やるべきことをはっきりさせたい』という気持ちが強くなっていきました。色々なことに手を出したとしても、すべてのミッションをクリアすることができないかもしれない。『人間はいつ死ぬかわからない』という考えも以前より強くなった気がします」
やりたいこと、やらなければいけないことを四つに絞った。「家族」「お笑い」、大好きな「サッカー」への恩返し、そして「Mother」を続けていくこと。
今年は戦後80年に当たる。戦争を知る世代にも観てほしいという思いが強く、80歳以上の人は舞台に無料で招待することを決めた。
「往復はがきで申し込んで頂く形にして、一通でも届いたら十分、と思っていたんです。でも、もう応募開始からすぐに届いたと聞いた。それが嬉しくて。観に来て頂いて感想を口にしてくれたら、こんなに嬉しいことはないんじゃないかな、と思っています」
(ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2025年3月3日号
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