阪神監督としての最終戦後、花束を受け取る金本氏(2018年)

ドラフト指名を希望した選手が日本一に貢献

   監督は結果が当然重視されるため、育成能力は評価されづらい。やはり名選手だったが、阪神の監督時代に日の目を見られなかった金本知憲氏(56)もその一人だろう。

 広島、阪神での現役時代は1492連続試合フルイニング出場という世界記録を樹立。通算2539安打はNPBで歴代7位、476本塁打は歴代11位という成績も残している。15年オフに阪神の監督に就任した時、チームは若返りの時期を迎え、「育成と勝利」の両方を追い求めなければいけない状態だった。1年目の16年は4位、17年は2位と躍進したが、18年はシーズン後半に大失速して17年ぶりの最下位に転落。責任を取る形で辞任した。

 ただ、金本氏が目指したチーム作りが間違っていなかったことは、その後のチームの成長で証明されている。就任してすぐのドラフトとなった15年に青柳晃洋の獲得を希望して5位指名したが、青柳は21、22年と2年連続で最多勝と最高勝率のタイトルを獲得する活躍をみせた。16年のドラフトで1位指名を進言した大山悠輔は打線の核に成長し、23年の日本一に貢献した。

「大山を1位指名した際は、ドラフト会場で落胆のため息が漏れました。ただ、その後の大山の活躍を見れば大成功です。青柳は制球難でフィールディングにも不安を抱えていたので、他球団の評価が高いとは言えなかったが、変則的なフォームからストライクゾーンに力強い直球を投げられることを金本さんが評価したのでしょう。真面目な性格でプロ入り後に課題を次々克服し、2年連続最多勝に輝きました。金本さんが監督の時にドラフトで指名した大山、青柳、坂本誠志郎、才木浩人、糸原健斗らはその後にチームの中心選手になっています。選手を見極める眼力は間違いなくすごい。その能力を生かせないのは惜しいので、球界に戻ってきてほしいです」(阪神を取材するライター)

 チームの編成を統括するGMを置かない球団も多いし、GMがいても選手経験の有無など、その経歴は各球団でバラバラだ。だが、かつて中日では落合博満氏、阪神では故・中村勝広氏と、監督経験者がGMを務めたことがある。監督として結果を残せなくても、選手の能力を見出す目をもっていた立浪氏、金本氏には、プロ野球を盛り上げるためにも何らかの形で再び球界に携わってほしい。そう感じている野球ファンも多いのではないだろうか。

(今川秀悟)

▼▼▼AERA最新号はこちら▼▼▼