オンラインインタビューに応じる中島敦さん(29、仮名)

2カ月で500万円使い果たす

 当時はコロナ禍で、外出もしにくい社会の雰囲気にフラストレーションもたまっていた。オンラインカジノは、それを発散できる場所でもあった。

 複数のクレジットカードを使い、それぞれ限度額まで金をつぎ込んだ。オンラインカジノを始めてから2カ月で、カードで借りた約500万円を使い果たした。

 カード会社からの督促状は、すべて無視した。

「負けてばかりだったわけではなくて、数万円を数百万円にしたこともあった。それがまたあれば、500万円を返すことくらい余裕だと思っていた。その時点で、自分は壊れていたのかもしれません」(同)

ひと晩で100万円を返済するミッション

 クレジットカードが使えなくなると、ヤミ金融に手を出した。LINEで身分証明書、給与明細書などの写真を送って、金を借りた。

「そのころから、いくら借りたか、よく覚えていません」(同)

 毎月、「ひと晩で100万円を返済するミッション」がルーティン化した。給料日の夜、中島さんは銀行口座に振り込まれた給与約30万円をオンラインカジノに入金し、朝までに100万円に増やし、ヤミ金融に返す、というミッションだ。

「そんなことがうまくいくはずもないですよね」(同)

 中島さんは、21年8月、両親を頼った。

「カードの支払いが滞ってしまった。金を立て替えてもらえないか」

「仕方ない」と金を貸した両親は、以降も息子の金の無心が止まらず、「おかしい」と感じるようになったようだ。両親から問い詰められたが、「オンラインカジノに金をつぎ込んでいる、とは言えなかった」。事情を打ち明けたのは、1年以上たってからだ。

「親にトータル1500万円くらい借金しました。息子から『苦しい、助けてくれ』と言われて、貸し続けたのだと思います」(同)

自分が「病気」と認めたくなかった

 23年夏、両親は「考える会」に相談した。中島さんは両親に連れられ、ギャンブル依存に苦しむ人たちが自らの体験を語るミーティング(通称GA:Gamblers Anonymous)に参加した。

 中島さんは言う。

「『俺はこいつらとは違う』と思いました。自分が『病気』だとは認めたくなかった。オンラインカジノをやめる気もなかった」

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