社宅を追い出され、所持金は数十円

 両親は考える会から、「金の無心に応じたら、ギャンブル依存は悪化する」とアドバイスされ、中島さんに金を渡すことをやめた。

 金に困った中島さんは、会社の名前を使って金を調達する方法を思いつき、実行した。そして、バレた。

「『解雇されるか辞めるか、選べ』と言われ、会社を辞めました」(同)

 24年2月、社宅を追い出された。所持金は数十円。行く当てはなかった。数時間思い悩んだ末、考える会に電話して、保護された。

 それ以来、オンラインカジノはやっていない。現在、中島さんは生活保護を受けながら、一人アパートに暮らし、GAに通っている。

短期間で依存の度合い重くなる

「オンラインカジノのことしか考えられなかったころの気持ちを『10』とすると、今は『3』くらい。だいぶよくなりました。でも時々、暇なときがあると、『この時間を埋めるために、お金を賭けたい』という衝動が湧き上がってきます」(同)

 生活再建の道を探っているが、就職先はなかなか見つからない。ヤミ金融業者によって個人情報がネットにさらされてしまったことも理由ではないか、と悩む。

「面接までこぎつけて、手ごたえを感じても断られてしまう。そういうことに今、苦しんでいます」(同)

 考える会・田中紀子代表は、長年、ギャンブル依存当事者やその家族に関わってきた。ギャンブル依存は「早期発見、早期対応が肝心。対応が遅れるほど、回復が難しくなる」という。特にオンラインカジノは、中島さんのように、短期間で依存に陥ってしまうのが特徴という。

「パチンコなど、従来の『ギャンブル』の場合、依存の度合いが重くなるまで10年くらいかかることも多かった。けれども、オンラインカジノは24時間365日、どこでもできてしまう。1、2年で抜け出せないほどハマってしまうことが多い」(田中さん)

日本人がターゲットに

 国際カジノ研究所の木曽崇(たかし)所長によると、「約20年前、オンラインカジノ市場を大きく成長させたのは、規制の整備が進んでいた『ギャンブル先進国』、英国の企業です。今でも英国の事業者数は最も多く、上場企業もあります」。

 英国ではオンラインカジノは合法だが、規制も厳しい。サイトに登録する際の身元確認も厳重に行われる。依存対策として、利用者によっては入金の金額やアクセスなどを制限される。

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