さらに、減量効果について解析した結果、GLP-1受容体作動薬によって得られる効果は人それぞれであることがわかりました。具体的には、104週目(観察開始から2年後)に体重を5 %以上減らした患者の割合は、セマグルチド群では67.8 %、プラセボ群では21.3 %であり、体重を10 %以上減らした患者の割合は、セマグルチド群では44.2 %、プラセボ群では6.9 %であり、体重を15 %以上減らした患者の割合は、セマグルチド群では22.9 %、プラセボ群では1.7 %だったのです。

長期使用の安全性は?

 この調査では、4年間という長期使用における安全性についても分析されています。GLP-1受容体作動薬による副作用が原因で研究への参加を中止した人の数は、プラセボ群よりもウィーゴビー群ほうが多く、薬を投与された人の16.6 %に対して、プラセボでは8.2 %であったことがわかりました。また、研究への参加を中止することになった副作用とは、主に吐き気、下痢、嘔吐、便秘であり、服用開始から数カ月は薬の量が増えるにつれて、これらの副作用が強くなることは、過去の調査[※1] によってすでに報告されており、今回の調査で安全性における新たな兆候は見られなかったと書かれています。

 結果的に、私は副作用に悩まされながらも、GLP-1受容体作動薬を約3年という長期間にわたり服用することができました。しかしながら、多くの人は治療を継続することがなかなかに困難なようです。

 アメリカのブルーヘルスインテリジェンス[※2] が体重管理のためにGLP-1受容体作動薬を使用している約17万人の患者データを解析した結果があります。それによると、約58 %が12週間の治療を完了することができず、治療から脱落してしまっていたこと、そして約30%が最初の1ヵ月で治療を中止していたことが明らかとなりました。

 性別は最初の12週間以内の脱落率には影響しなかったものの、18から34歳までの若い患者ほど、GLP-1受容体作動薬による治療から早期に脱落してしまう傾向が強かったということや、一方で、内分泌専門医や肥満専門医のような体重管理や肥満に関する専門知識を有する医師からGLP-1受容体作動薬を処方された患者は、12週間の治療を完了する可能性が高かったことがわかったといいます。

 多くの人がGLP-1受容体作動薬による治療を中断する理由[※3] として、副作用はもちろん、服薬順守、効果的でない処方、費用、薬の不足などさまざまなものが考えられています。特に、副作用により中断してしまうということには、自分自身の経験からも非常に納得ができました。次回のこのコラムでは、GLP-1受容体作動薬が、認知症や感染症などのリスクを軽減する潜在能力があるかもしれないという最新の報告をお伝えします。

【参照URL】

 [佳山1]https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2307563

 [佳山2]https://www.bcbs.com/media/pdf/BHI_Issue_Brief_GLP1_Trends.pdf

 [佳山3]https://www.mercer.com/en-us/insights/us-health-news/glp-1-discontinuation-affirms-need-for-holistic-weight-loss-plan/

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