蘇る美少女 富江(「伊藤潤二 自選傑作集 Dark Colors」第1弾「富江・もろみ」から)
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 1986年の誕生以来、何度殺されても蘇る魔性の美少女・富江。その美しさと妖しさは男たちを魅了し、狂気と破壊の道へと導く。AERA 2025年2月24日号より。

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「あなた ご自分の顔を鏡で見たことがないの?」「無礼は許さないわよ」

──ホラー漫画家・伊藤潤二が歯科技工士時代に生み出したヒロイン・富江。漫画家になるきっかけとなった彼女の誕生について、伊藤は話す。

「死んだはずの人間が何食わぬ顔で現れる。しかも幽霊ではなく実際の人間として──そんな不思議さや不気味さを描きたいなと思ったんです。それとトカゲの尻尾やプラナリア(注・ウズムシと呼ばれる扁形動物。再生能力が非常に高く、切った口から再生する)などの生き物の特徴を組み合わせて描きました」

 その美しさと魔性、傲慢さに男たちは狂い、あるときはバラバラに、あるときはその顔を切り刻んで富江を独占しようとする。だが、そのたびに富江は蘇るのだ。ああ、私も富江に罵倒されたい!

「バラバラにするシーンなどはやはり残酷なので、当時から描くと嫌な気分にはなっていたんです。でも富江を綺麗に描けると、そこに達成感があるというか」

 最近もサンリオのキャラクター・キティとコラボしたり、SNS上でK-POPアイドルの「富江メイク」がバズるなど、魅力は40年近くを経ても色褪せない。

 1月30日からスタートした朝日新聞出版のコミックサイト「アサコミ」では、伊藤監修のもと美しくカラー化された富江が登場する。第1弾はミンチにされた富江が酒になる名作「富江・もろみ」だ。

「描いていたときは日本酒のイメージで白色だったのですが、よく考えればミンチから作っているので赤。でも飲み物としてどうなんだろうと思ったときにワインのようなロゼ色はどうか、とアイデアをいただいたりして、自分も気がつかなかった発見がありました」

 まだまだ富江は発展と増殖を続ける。(フリーランス記者・中村千晶)

AERA 2025年2月24日号より

AERA 2025年2月24日号

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