AERA 2025年2月10日号より

 FAとは、フリーエージェントのことでプロ野球などでよく使われる用語だ。どこの球団とも自由に契約できる状態のことをさす。もちろん今の球団と再契約してもいい。

 プロ野球の場合、1軍登録145日以上を8シーズン達成すればその権利を得られる。だが、重要なのはFAの権利を得たときに、他球団が欲しがるような能力やスキルがあるかということだ。

 後藤さんが言う、ビジネスにおける「FA宣言できる状況」とはまさにこのことだ。他社も、今の会社も欲しがるようなスキルをもつ人材になれるかどうかで、定年後も自身の能力を生かした豊かな働き方ができるかが左右される。

 その際、後藤さんは、年収が減るような無理な転職は勧めない。それどころか、「どちらかといえば、まずは会社や組織の中で自分を生かす道を考えることを前提に考えるべきだ」と念押しし、「リスキリングというのは、会社の業務に必要な新しいスキルの習得を支援する仕組みです。日本社会は転職ありきのイメージが強く、それは間違いです」とくぎを刺す。

転職の決断は慎重に

 後藤さん自身も、心身に苦しんで準備もなく40代で会社を退職した経験がある。辞めた後で、次の就職先を探したが、なかなか決まらず苦労した。100社以上に落ちて、結果的に給与も3分の1になった。「現在多くの中高年は、転職して年収が下がる場合が多く、まずは組織内でリスキリングをする機会を探すべきだ」

(経済ジャーナリスト・加藤裕則)

AERA 2025年2月10日号より抜粋

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