夏場以降は調子を取り戻したものの、結果的に14試合の登板で3勝6敗、防御率3.38と大きく成績を落とした。オフには腰の怪我が再発したことも不安材料である。スケールの大きさはリーグでも屈指だけに、まずはしっかりコンディションを整えて巻き返しを狙いたい。

 一方のセ・リーグではチームのエースへと成長した東克樹(DeNA)も2年目のジンクスに苦しんだ経験者だ。ルーキーイヤーの2018年はいきなり11勝をマーク。しかし翌年は怪我でわずか7試合の登板で4勝に終わった。翌2020年にはトミー・ジョン手術を受けて長期離脱。完全な形で一軍に復帰できたのは2023年のことだった。

 セ・リーグでは2022年新人王の大勢(巨人)と2023年新人王の村上頌樹(阪神)も少し苦しんだ印象だ。大勢は1年目からいきなりクローザーに定着して37セーブをマーク。しかし翌年はシーズン開幕前にワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場した影響もあって調子を落とし、27試合に登板して14セーブ、防御率4.50という成績に終わっている。村上は3年目に先発ローテーションに定着して10勝6敗1ホールド、防御率1.75という見事な成績で新人王とMVPをダブル受賞。しかし昨年は安定感を欠く投球が目立ち、防御率は2.58と悪くなかったものの7勝11敗と成績を落とした。

 ここまでは苦しんだ選手を挙げたが、田中、水上以外はチームの主力に定着しており、そこまで極端にジンクスを引きずっている選手は多くない印象を受ける。新人王を受賞した他の例を見てもセ・リーグは村上宗隆ヤクルト)、森下暢仁、栗林良吏(ともに広島)、パ・リーグは平良海馬(西武)、宮城大弥(オリックス)など球界を代表するような選手に成長しているケースが目立つ。この要因としては、データ分析やその対策が早くなっていることが大きいのではないだろうか。少しでも一軍で結果を残すと他球団はすぐにその弱点を突くようになっており、そもそもそれを乗り越えるだけの実力がなければ1年間でも結果を残せないようになっていると言われている。それを考えるとジンクスどうこうよりも、より一軍で活躍するハードルが高くなっているとも分析できるだろう。

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ジンクスが減ったもう一つの理由