
ドナルド・トランプ米大統領の政策は、経済や株価、物価、そしてジェンダー・ダイバーシティーに多大な影響をおよぼしそうです。今回は、これらの側面について詳しく考察します。
過去のトランプ政権下では、2017年に大規模な減税策が成立し、法人税や所得税の引き下げが行われました。この減税は、企業の利益増加や投資意欲の向上を促し、株価の上昇に寄与しました。実際、トランプ氏の当選直後から株式相場は「トランプ・ラリー」と呼ばれる上昇を見せました。
今回はAIへの大規模投資を促す政策や、暗号資産の金融規制の緩和など産業政策への期待から25年も株価は好調との見方があります。まるで1920年代に自動車を大衆化させて、アメリカ経済を回復させた当時の大統領のようだという声も……。
関税引き上げの影響
一方、保護主義的な通商政策、特に対中関税の引き上げは、サプライチェーンの混乱や企業のコスト増加を招き、一部の業界や企業にとってのマイナスの影響、そしてアメリカ国内のインフレ継続への懸念があります。しかし、そんなツッコミはトランプ大統領は承知で、17年に可決された減税策を続けることでインフレ抑制に動くとの期待もあります。
では、過去のトランプ政権の関税引き上げの影響はどうだったのでしょうか? 結果的には、物価上昇圧力を高める要因となりました。しかし、雇用への影響は軽微なものでした。NBER(全米経済研究所)で発表された論文(注1)の試算によれば、当時の関税戦争によって雇用が増減することはなかったとのことでした。農業の一部で雇用にマイナスが生じたものの、農業への補助金政策によって雇用減を若干は緩和できたことも報告しています。この論文では、関税戦争によって明確な被害を受ける人が少なかったことも、トランプ支持層の拡大につながったと報告しています。インフレへの懸念は残るものの、肝心の雇用が安定的で、実質賃金も拡大するならば、アメリカ経済は底堅いのかもしれません。