「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」を筆頭に信託報酬0.05%台の投信3本の安さ比較。運用報告書から独自試算した。AERA2025年2月3日号より。
【全世界株式コスト今期最安が判明】直近1年の『本当のコスト』はこちら
* * *
アエラ2024年12月30日−25年1月6日号「S&P500投信『本当の』コスト」で投資信託「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が1年半ぶりに信託報酬引き下げを発表した理由と、現状最安のS&P500投資信託の分析結果を載せた(ウェブサイト「アエラドット」に転載中)。
本記事は後編。米国株式(S&P500)は安くなるが、新NISAの一番人気「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(以下オルカン)信託報酬0.05775%(税込み・年率・最大/以下同)は何も発表がない。「楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンド」が0.0561%なので期待していたが。三菱UFJアセットマネジメント商品開発部長の伊豫田敏朗(いよだとしろう)さんに「オルカンの引き下げはないですか?」と聞いた。
「競合の信託報酬、総経費率等の運用コストを総合的に勘案し、現状オルカンの引き下げは予定していません。23年9月に信託報酬率の引き下げを実施しておりますが、現行水準のままでもコンセプトに則した運用が行われていると考えています」
三菱UFJアセットは、楽天・プラスや野村の「はじめてのNISA・全世界株式インデックス(オール・カントリー)」が運用1期目なので運用報告書≒決算書が揃うのを待っていた。信託報酬「以外」のコストやリターン、運用のクオリティー等も考慮するため、運用報告書がないと詳細がわからないからだ。
オルカンが信託報酬を引き下げなかったのはなぜ? 運用報告書から探ってみよう。
先に、今期の特殊要因を記す。そもそもオルカンの信託報酬が「1年を通して」0.05775%ではない。23年5月10日まで0.1144%だった。その後、9月7日までが0.1133%。0.05775%は9月8日以降の8カ月弱だ。直近で2回も引き下げているのである。