不妊治療中、第一子の子育てにも奮闘した榎本さん(本人提供)※画像の一部を加工しています

ギャンブラーのようにお金を積んだ

 榎本さんが自身の不妊治療体験談をコミックエッセイとして発表すると、読者の女性たちからは心ない批判も寄せられたという。

「『大金を払う余裕があっていいですね』というバッシングはたくさん届きました。夫は普通の会社員なので、費用をまかなうためにだいぶ無理して働きましたよ。睡眠時間を削って漫画を描いて、まだ小さかった子どもの面倒もみて……。冷静に考えると、お金をかけて顕微授精をしたところで、体が疲弊していて子宮の状態が悪ければ妊娠の可能性は下がってしまう。本末転倒だったのかもしれません」

 もう一つ目立ったのは、「一人目の子どもがいるのに、なぜそこまでして二人目がほしいのか」という批判だ。これについて榎本さんは、「当時は意地になっていた」と振り返る。

「次第に、『これだけお金と時間を費やしたのだから今更引き下がれない』という気持ちになってくるんです。顕微授精では着床率を上げるためのオプションメニューを追加したり、妊娠率が高いと評判のクリニックで診てもらうために大阪に通ったりと、ギャンブラーのようにお金を積みました」

 漢方薬を飲む、子宝温泉に出かける、インターネット上で祈禱(きとう)を受ける……。わらにもすがる思いでなんでも試した。その裏には、意地だけでなく焦りもあった。

「年齢が上がるにつれて妊娠率は下がるので、早く結果を出さなければと必死でした。おかしな話ですが、病院で子宮に受精卵を移植した途端に、それが失敗する前提で『次は何カ月後に移植できますか?』と先生に聞いていました。うまくいかなくても、切り替えて次へ進む。いちいち落ち込んでいたら、とても精神が持たなかったと思います」

 当然、妊娠できる女性へのネガティブな感情もふつふつと湧いてきた。

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女性たちの「ねたみそねみ」