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 トランプ氏が米大統領に再び就任し、脱炭素対策の後退への懸念が広がっている。バイデン政権の環境政策と足並みをそろえてきた日本がやるべきこととは。AERA 2025年1月27日号より。

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 気候変動対策に後ろ向きなことで知られるトランプ氏。昨年の大統領選で、こう繰り返した。

「ドリル、ベイビー、ドリル(化石燃料を掘って、掘って、掘りまくれ)」

 1期目は大統領に就任すると、即座に温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から脱退した。今回も間違いなく脱退すると見られるなど、脱炭素対策の後退への懸念が世界に広がる。

 環境・エネルギー政策が専門の、日本総合研究所調査部の栂野(とがの)裕貴さんは、「まず、日本を含めた先進国の足並みが乱れる」と指摘する。

「米国はパリ協定から再脱退すると、途上国への資金支援を撤回するでしょう。そうなると、他の先進国がその穴埋めをしなければいけないことになりますが、いま欧州は政治がガタガタです。先進国の足並みは乱れ、途上国向け支援全体が滞る可能性があります」

途上国に技術で貢献を

 途上国の問題もある。これまで温室効果ガスを排出してきたのは先進国だから、先進国ができるだけお金を払えというのが途上国のスタンス。それが、最大の先進国の米国が抜けることで、途上国の不満が一段と高まる、という。

「中国の影響力も注目しています。温暖化により海面上昇で国がなくなる危機に瀕しているツバルやキリバスなど島嶼国は、再エネやEV(電気自動車)技術で進んでいる中国と結びつきを強める可能性があります。その結果、国際社会における中国の影響力が増していくでしょう」

 バイデン政権の環境政策と足並みをそろえてきた日本も、戦略の再考を求められることになる。栂野さんは、日本がやるべきことを二つのパートに分けて考える。

「まず、脱炭素戦略の見直しです。トランプ氏は、EVへの補助などを盛り込んだインフレ抑制法を修正すると見られています。そうなると、米国内の蓄電池の生産能力が下がり、日本は中国への依存度が今以上に高まるリスクが生じます。それに備え、カナダやオーストラリアなど蓄電池のサプライチェーンの構築を進めておくことは重要です」

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途上国に資金面とともに技術面でも貢献できる