まずは症状が変化した原因に目を向けること
多くの場合、認知症の進行はゆるやかで、急に悪化したり、昨日と今日が大きく違ったり、朝と晩で違ったりすることはありません。
もし急な変化があったら、「せん妄」という意識障害や、「うつ病」などの精神疾患が重なっていたり、治療ができる認知機能障害が重なっていたりして認知症の状態が悪化した可能性を考えてみるべきです。
認知症は進行性だから悪化しても仕方がないと諦めるのも、出現した症状にだけ対処するのもNG。まずは症状が変化した原因に目を向けることが大事です。
認知症の原因となる脳の障害を起こす病気は70以上もあります。このなかには、治療ができるものが含まれます。そして、治療ができるものでも、医療へのアクセスが遅れると、治療をしても認知症の状態の改善が難しくなるものもあります。
また、1人の人に4大認知症のいずれかと、治せる病気が原因の認知症が重なっていることはよくあることです。4大認知症のうち2つが重なっていることもあります。
ですから認知症はグラデーションをもっていて、わかりにくいものだと言うのです。わからなさに対して謙虚なまなざしで、いろいろな可能性を考慮する必要がある、と言えます。
症状の変化に気づいた場合も、真っ先に「改善できる可能性」について考えましょう。
(内田直樹 認知症専門医)