※写真はイメージです(gettyimages)
この記事の写真をすべて見る

 いつまでも元気で過ごすためには、どんなことを心がけるべきなのか。認知症専門医の内田直樹さんは「老化が早い人ほど認知症を早く発症する傾向にある。しかし、認知症の中には治せるものもあるため『年だから仕方ない』と諦めてはいけない」という――。

※本稿は、内田直樹『早合点認知症』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

「年齢」と「老化」はイコールではない

 訪問診療をしていて度々、感じることの1つが、「人によって老化のスピードは違い、見た目だけで75歳か、95歳かは区別がつかない」ということです。

 何が老化を早めるのか、一概に示すのは難しいのですが、遺伝的な影響があり、さらに生活習慣や持病の有無などが大いに関係すると感じます。年齢と老化は決してイコールではありません。

 そして、老化が早い人ほど認知症を早く発症するとも思います。

 認知症の最大のリスク因子は「年をとること」とされますが、それは年齢を重ねて認知症の状態になっていくのではなくて、老化が進むことで認知症の状態になっていくということなのです。

 年齢は何歳でも老化が早く、認知症が進行し、自分の身の回りのことのほとんどを人に委ねて暮らしている人がいる一方、100歳を超えても老化を感じさせず、認知症の状態ではない人もいて、年齢はただの数字だと思うようになりました。

早合点認知症』(サンマーク出版)の137ページではアルツハイマー型認知症の原因であるアルツハイマー病の進行度、重症度を評価するためのスケール「FAST」を紹介しています。この表の最右列に、私たちが左列の機能を何歳頃に獲得するかが示してあります。

93歳の大叔父から友達申請が来た

 これを見ていただくと、アルツハイマー病の進行過程は、赤ちゃんの発育・発達の逆をたどることがわかり、つまり、アルツハイマー病とは老化の一部だと考えることもできると感じます。

 少し前のこと、私の大叔父(93歳)がSNSを始めて、私に友達申請がありました。しかし私は大叔父の年齢を考え、「きっと“なりすまし”だろう」としばらく放置していたのです。すると叔母(大叔父の娘)との会話の機会に「『直樹が申請許可してくれない』と嘆いていた」と聞いて、失礼を反省したのでした。

 高齢者医療に携わるなかで年齢はただの数字だと実感しながら、身近な人に対してエイジズムがあったことに気づきました。

 エイジズムとは「高齢者だから」と年齢の型にはめて考えること。年齢を理由に、偏見で差別することを意味する言葉です。

 大叔父を客観的に見れば、自分らしく生活を楽しむ達人。老いを感じさせない人ですから、改めてエイジズムで人をみるものではないと感じた出来事でした。

次のページ