この一般財団法人日本再建イニシアティブ(後にアジア・パシフィック・イニシアティブに改称)で福島第一原発事故を調査し、後に自らの取材を追加してできたのが『カウントダウン・メルトダウン』(2012年12月)で、私はその原稿をもらって本にした。
その後、民主党政権の検証や安倍政権の検証などをこのシンクタンクをつかって続けているうちに、人脈や問題意識もさらに広がっていったのだという。
シンクタンクの調査と本の取材は別。その取材費用はすべて自費だという。
たとえばこの本では、マイケル・フリン、ジョン・ボルトン、マット・ポッティンジャーといった第一次トランプ政権の高官たちが取材に応じている。これらの人々は最初は正面から、レターを出して取材を申し込むのだそうだ。自分がどんなジャーナリストで、どのような本を書いてきたか(英語版の本のリンクもつけて)、安倍晋三がその時点で何度この本のために取材に答えているか、などの情報をのせて、判断を乞う。
慰安婦問題の章では、元大統領の朴槿恵(パックネ)からも大邱(テグ)で会って話を聞いているが、この取材は韓国の親しい人からの紹介だったという。
米国以外の国では、正面からの取材申し込みで応じてくれることはまずないそうだ。
この本には左右両極から、批判もある。しかし、そうした批判も当事者の証言の前には色あせてみえる。
本のあとがきにもあるが、「独立した立場」というのがもっとも重要だ。
アジア・パシフィック・イニシアティブは、国際文化会館と合併をし、国際文化会館は定款を変えてシンクタンク機能をもつことになった。船橋は、同会館の特別招請ジャーナリストとして引き続きジャーナリストの仕事を続けていくのだという。
※AERA 2025年1月27日号