AERA 2025年1月20日号より

 世界を肌で知ること、その世界がすぐそばにある環境にいること。それこそが日本バスケが強くなっていくのに必要なこと。しかし、まだまだ世界の壁は分厚く高い。無様にはね返されることもこの先、幾度も経験するはずだ。それでも、逆境も世間の逆風も大歓迎だ。

「大舞台に出られずに、世間に関心も持たれず何も言われないくらいだったら、辛辣な意見だとしても、出場していろんな意見をもらったほうが日本バスケの未来につながるはずなので」

八村塁は「とんでもない」

 今、31歳。現役バリバリのスター選手とはいえ、若手が育つBリーグや代表ではベテランの域だ。同じポジションには河村勇輝の台頭もある。田臥勇太、富樫、河村……。バスケファンとしては結びつけたくもなる日本バスケ界に連なる小兵ガードの系譜。田臥も富樫も本場・米国でのプレーに挑戦した。今まさにグリズリーズで挑戦を続ける河村をどう見ているのか。

「W杯で一緒に戦っていて、河村選手は対戦相手のNBA所属選手を上回るパフォーマンスを見せていたので、何も不思議ではないという感覚です。ただ、僕はその近くまで挑戦した一人として、170センチちょっとの身長でNBAのコートに立つというすごさがよくわかります。この先、周囲の見る目はどんどん厳しくなるだろうし、いかにチームの戦力になっていくかを必死に考えているはずです」

 一選手として純粋に応援したいと富樫は続ける。同じポイントガードというポジションで、スタメンを争うライバルだと思いきや、「元々人と比べるタイプでもないので」と笑い飛ばす。

「この人に負けたくないと思ってプレーする。そういう感覚になったことがないんです。河村選手は僕と年も離れているし(8歳差)、プレースタイルも異なるので、そういう目で見たことはないなあ。アスリートなのにそれでいいのかというところはありますけど(笑)」

 NBAでは八村塁もレイカーズの主力として活躍を続ける。河村以上に凄みを感じている。

「当たり前のように名門チームでスタメンを張っていて、とんでもないなと。メディアでの扱いに差はありますけど、メジャーの大谷翔平選手にも劣らない、すごいことをやっているんだということが、もっと世間に伝わればいいのにと思っています」

(写真・蜷川実花、編集部・秦正理)

AERA 2025年1月20日号より抜粋

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