(写真はイメージ/gettyimages)
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家族に放置され、自分が「発達障害」だと気づかないまま大人になった女性がいる。女性は発達障害の診断時に、家族からのネグレクトと精神的虐待を認識した。発達障害を知ったことで、納得できたことがある。自分を認めて歩き出すまでを聞いた。

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「発達障害」とわかったとき

 ネコゼさん(30代)は大学では両親が決めた寮の生活に慣れず、強迫性障害が悪化してしまう。奨学金の手続きを忘れ、中退することに。彼ができ、一人暮らしを始めた時は「2週間ごとの精神科通院時は、実家に戻る」という両親の条件に従った。就労継続支援A型(障害や難病のある人が仕事をする上で受けられるサービス)を利用して始めたバイトは、兄たちのことで我慢したり両親に理不尽に怒られたりしたトラウマがよみがえり、半年でやめた。

 第二の転機が訪れたのは、30代前半の時だ。

 主治医が異動となったことで転院をした際に、現主治医から「発達障害の疑いがある」と告げられ、改めて検査をした。

 検査の結果、重度の強迫性障害に加え、生まれつきの脳の機能障害である発達障害のひとつ、ADHD(注意欠如・多動性障害)と診断されたのだ。アスペルガー症候群については、「グレーゾーン」だという。

「まさか自分が?と、ADHDと診断された時は、とてもショックでした。でも説明を聞いて、思い当たることがとても多かった。なんでうまくいかないんだろうと長年つらくて悩んできたことのほとんどが、発達障害が原因だったんだ、と」

(C)モンズースー、ネコゼ/KADOKAWA

強迫性障害はADHDの二次障害

 ADHDは不注意、多動性、衝動性を特徴とする。

 実はネコゼさんは小さいころから、一生懸命覚えようとしてもどうしても忘れてしまうことがあった。衝動的な言動で、場にそぐわないことをポロッと言ってしまう。バイト先では「話を聞いていないからミスが多い」「もっと真面目にやってくれなきゃ迷惑」と言われ、人間関係のトラブルにつながることが多々あった。

 精神科医はこう説明した。

「ご両親からはネグレクト、上のお兄さんからは精神的虐待を受けてきたので、ADHDに気づかないまま育ってきたんでしょう。今まで治療を受けてきた強迫性障害はADHDの二次障害の可能性があります」

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頑張ってきた自分自身を大切にして